2022年11月から運営している、「オンライン日本語教師サポートプログラム」では、マスターテクストアプローチを使って会話授業の実践を行っています。
この記事では、そこでの実践内容(第4課)について共有します。
会話実習コース
※「実践実習コース」は、2023年8月「会話実習コース」に名称を変更しました。内容に変更はありません。
このコースでは、マスターテクストアプローチを使って会話の授業を行なっています。毎週の授業担当者を決め、集客から授業実践、振り返りまでを行っています。
他のメンバーの授業実践(録画)が見られたり、フィードバックがもらえること、教師同士のつながりができることなどが魅力です。
月額会員制のサブスクリプションサービスなので、いつでも入会・退会可能です。毎月説明会も開催しています。
実習の概要
「会話実践コース」では「はなそう!みなとにほんご」を使って、基本的な会話授業の流れを練習しています。
1回のレッスンは25分で、私はiPadアプリGoodNotes5を使って授業をしていますが、他のメンバーさんはPDFテキストをPCで開いて使ったり、Googleスライドに作り替えて授業をしていたり、様々なスタイルがあります。
それぞれの実践は、「会話実習コース」の中で共有しています。
Unit4の分析
今回はUnit4「毎日の生活について話す」の授業実践を共有します。
※⇧公式動画のタイトルがUnit5のものになっていますが、動画の内容はUnit4です。
注意点
Unit4で扱われている文型が、動詞・ます/ません・(時間)に・(場所)で・(人)と・〜から〜までと、複数あります。
文型の理解・運用の正確さに焦点を当てるか、マスターテクストの理解、またはアウトプットに焦点を当てるか、目標を定めて授業を設計した方が良さそうです。
あれもこれもやろうと思うと、どれも中途半端に終わってしまう可能性があります。
活動案
「会話実践コース」のメンバーさんが実践された内容については、コースの中で共有しています。この記事では、私が個人的に行った授業(アイディア)について共有していきます。
動詞のイラストに○✖️を書いて、「〜ます」「〜ません」を言う。
イラストをバラバラにして、音声を聞きながら順番通りに並べ替える。
イラストだけを見て、Aさんの毎日はどんな毎日か、自分の言葉で説明する。
授業案
以下は25分レッスンの授業案です。
- 自己紹介、タイトルと目標を確認
- P.15イラストで動詞を確認
- 自分が毎日すること(動詞)をリストアップ
- P.17佐藤さんのイラストを見ながら、マスターテクストの音声を聞く
- マスターテクストに関する内容質問
- 教師の後に続いてリピート練習
- 学習者が一人で読む ※発音指導
- イラストだけを見ながらディクトグロス
- マスターテクストを参考に、学習者の1日について会話しながら文章作り
- 作った文章を一人語り
- 質問受付・まとめ(今日学んだこと)
会話をしながら学習者から情報を引き出し、ある程度まとまった文を作ります。日記のイメージです。
最後に、出来上がった文章を読んでもらい、「一人でもこんなに自分のことが話せるんだ!」と実感してもらう、という流れをフォーマット化しています。
内容質問例
イラストを見ながらマスターテクストの音声を聞いた後、きちんと内容が理解できているかを確認するために「内容質問」を行います。
※テキストの中にも質問例がありますが、数が限られているので追加で検討が必要です。
エマさん | 佐藤さん |
・エマさんはいつも何時に起きますか ・起きてから、何をしますか ・図書館で、何をしますか/どこで本を読みますか ・子どもと一緒に何をしますか/だれと勉強しますか ・いつ勉強しますか ・何時に晩ごはんを食べますか ・エマさんの毎日は、どんな毎日ですか | ・佐藤さんはいつも何時に起きますか ・うちから会社まで、なにでいきますか ・朝ごはんは、どこで食べますか ・佐藤さんの仕事は、何時から何時までですか ・佐藤さんの毎日を聞いて、どう思いましたか |
実践内容
ここからは、私の具体的な実践を共有していきます。
25分レッスン①
25分のレッスンで2つのテクストを扱うのは無理だと思ったので、初めから片方のテクストだけを使おうと決めて望みました。
↑こちらは授業で実際に使った(書いた)ノートです。↓
こちらの学習者さんは中級レベル(N3-2)で、メキシコ人、独学で日本語を勉強されている方です。
「佐藤さんは〜ですが、Sさんはどうですか?」のように聞いて、学習者のテクストを作成しました。
「乗り換える」「サービス残業」という言葉を勉強できて良かった。役に立つ。
と言ってくれました。まさに「自分ごと化」「個人化」ですね。
こちらの学習者さんとの授業録画(29分)は、ブログ下部にて公開しています。
25分レッスン②
こちらの学習者さんは上級レベルで、もう何年か日本に住んでいらっしゃるということでした。
初めに音声だけを聞いてイラストを並べ替えるアクティビティをした後、テクストの内容に関する質問をして、自分自身の毎日の生活について話してもらいました。
上級レベルの方にこのテクストの内容はさすがに簡単すぎましたが、お互いのことを知るきっかけとしてトライアルレッスンなどではレベルを問わずに使えるのではないかと思いました。
この時の授業は、「THE マスターテクストアプローチ」の授業ができたのではと思っています。
For conversation practice is good the time of 25-30 minutes, but for explaining grammar rules, maybe 50 minutes will be better.
というフィードバックをいただきました。確かに、学習項目が完全に未習の学習者を相手にする場合には、もう少し授業時間が必要だと思います。
ただし、このレッスンのターゲットは「文法の基礎知識がある人」なので、語彙や文法に関しては「説明」しない前提です。
もし、このテキストでゼロから学ぶような学習者を相手にする場合には、それなりに工夫が必要です。
こちらの学習者さんとの授業録画(25分)は、ブログ下部で公開しています。
50分レッスン
1コマ50分の、1対1のプライベートレッスン(オンライン)でも、このテキストを使っています。
↑こちらは授業で実際に使った(書いた)ノートです。↓
こちらはN2取得済みの、中国人学習者さんです。日本語学校にも通われていますが、アウトプットの量が極端に少なく、会話はN4-3レベルです。
50分レッスンなので、少し長めのエマさんのテクストを使って、じっくり学習しました。
音声を聞く前にイラストから内容を推測して説明してもらったり、あらかじめ時間の部分を隠しておき聞き取り練習をしたりという工夫をしました。
エマさんのテクストの右下(「楽しい」のイラスト)を見て、
「(物語/本)を読みます/話します」どちらが正しいですか。
というような質問も出ました。
感想
エマさんのマスターテクストは長めなので、25分授業なら佐藤さんの方を扱い、早めに学習者のアウトプット活動に移った方が良さそうだと感じました。
文法が複数出てくるので、事前に的を絞ってから臨んだ方が良いです。必要なら、時刻の言い方なども確認・練習してもいいかもしれません。
余談
ある学習者さんから「接続詞」について学びたいという要望があったので、その際にもこちらのテクストを使いました。
長い文は作れるけど、ただ文を羅列しているだけのようになって、つながりのない文章になってしまう…。
という悩みを持っている学習者さんは、案外多いのかもしれません。
マスターテクストアプローチでは、ある程度まとまったモデル文を使うので、そういった接続詞に関する練習(習得)もしやすいかもしれません。
会話基礎コースへの参加
現在すでに開講している、会話授業の実践を通してファシリテーションを学ぶ「会話実習コース」に加え、会話授業の基本的なやり方を学ぶ「会話基礎コース」を新たに開講します。
8/30(水)に、マスターテクストアプローチ体験会兼コース説明会を開催しますので、興味がある方はぜひそちらへご参加ください。
授業録画の共有
以下では、中級者(29分)と上級者(25分)の授業録画を公開しています。
マスターテクストアプローチや会話授業の参考になれば幸いです。
※「実践実習コース」では、他の方の授業実践や資料などを公開・共有しています。コースへ参加していただくと、より一層学びが深まること間違いありません!